優しさ
優しさ
Kさんは音や感覚にとても敏感な方で、例えば両手を勢いよく合わせてパンと音がすると暫く同じ動作を繰り返します。両手の合わさった時の皮膚感覚や音が一度Kさんを捉えると、手のひらが赤くなっても自分の行動を自力で抑制することが難しくなります。Kさんの手には瘤のように皮膚が硬化した部分があります。できるだけKさんが自然に落ち着かれるのが一番良いと考え少し様子を見ていたところ、隣に座っていたHさんが、さりげなくKさんの手を握りました。Kさんもパニックなど起こすこともなく何度か上半身を大きくゆらしてそのまま落ち着かれました。
Hさんは否定的な言葉や態度でKさんの行動を止めた分けではありません。まして力づくで行動を抑制した分けでもありません。二人の手が触れあってそこに何が流れたのか言葉では説明できませんが、共に過ごす友達同士の中で育まれる信頼関係は、少しの動作と大きな愛情で課題となる行動を改善に導くことがあるのだということを目の当りにしたように思いました。
Hさんに限らず振風苑では、日中様々な形のコミュニケーションが生まれます。微笑ましいこと、思わず笑ってしまうようなこと、観察というアンテナをピンと張っていないと見過ごしてしまうようなことなど、様々なコミュニケーションやスキンシップはいつしか自分の心も他者の心も豊かにしてゆくようです。